ギルドの受付の誤想

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「どこか行くの?」 「サボり――あ、いやその、麦酒を買いに、ちょっとな」  スカイはそう言って笑うと、僕達を交互に見た。 「お幸せに」  ……僕は頷く。実際、今が幸せだ。  このようにして、『苔庭のイタチ亭』を契機に、僕とシオンの新しい関係が幕を開けた。その後も毎夜、僕の仕事終わり、シオンの依頼達成後には、『苔庭のイタチ亭』で食事をとるのが日課となり、食後は僕の家やシオンの家へと行く頻度が増えた。  ギルドでシオンと顔を合わせた時、僕はもう心がけずに笑える。シオンの顔を見るだけで、心から笑顔が浮かんできてしまうのだ。なおシオンは、思ったよりも嫉妬深い。僕はそんなシオンに溺愛される日々を送っているのだが、それはまた別のお話だ。  今夜も、『苔庭のイタチ亭』で僕とシオンは待ち合わせをしている。  いつまでもこの幸せが続きますようにと祈りながら、僕は静かに本日の仕事を終えた。 【終】
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