砂漠の足跡

3/44
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
しかし、私は何もあてのない放浪を続けているわけではなかった。 私の隣には、唯一の指針となる、誰かの足跡が残されているのだ。 すでにこの大地を踏み出した、名無しの足跡がどこまでも続いている。 名無しの足跡は、くっきりとした靴裏の形になっており、まるでその者に確固たる意志が存在しているように見えた。 丘陵が続く不安定な大地をものともしないのか、一定の間隔を保ち、真っ直ぐに伸びている。 あまりにも綺麗に統一され、砂が作り出した現象のようだった。 始まりを思い出せなくても、終わりが見えなくても、この足跡が続く限りは、私の道しるべとして歩くことができる。 他の全ては砂だらけの空間で、側から見れば私はどうしようもない迷子になるが、この名無しの足跡があるおかげで、完全なる迷子にはなり得なかった。 希望の道と信じていた。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!