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比べて、私の足跡はどうだろう。
乱れた足取りはその痕跡を歪めていく。
深く食い込む砂粒が、足を上げた時に窪みに還り、手で掘り起こしたような無残な形だけが残る。
乱心とともに、足跡は不均等な間隔を空けて刻まれていく。
となりには、およそ理想の形と差し支えない足跡が、常に設けられている。
おかげで、私の足跡は対比され、なおも歪んで見えることだろう。
私は振り返りたくなかった。
振り返ったところで、秩序を失った過去の面影が横たわっているだけなのだから。
劣等感が私を振り向かせないのだ。
それでも、私は自分の乱れた足跡の形こそが理想なのだと、無理くりに納得しているところもある。
過去を覗いたところで、そうそう理想の面影が蘇ることもない。
自分が人としている以上、痕跡は記憶としては思い出の光になり、現実の影は見るも耐えない、腐敗を終えた化石でしかない。
私は記憶として、ただ乱れた足跡を思い、理想の足跡をただ隣になぞること、それだけに努めたのだった。
私は何度目かの、無心に帰していく。
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