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パワハラで仕事を辞めた。
精神の悲鳴と身体の疲労は既に限界値を超えていて、全身の倦怠感で日中にずっと起きていることすらかなわない。
そんな中、“実家に帰ってこないか”と電話してきたのは兄で、私はとんとん拍子に実家に帰ることになった。家族の中で一人だけ他県に出ている私は、家族からしたら心配の対象なのだろう。
昨日引越しを終えた私は、疲労からかすぐに寝てしまった。スマホを見ると驚くことに丸一日少し寝てしまっていたらしい。お手洗いを済ませ夜に階段を上る私に、兄が下から声をかけてきた。
「おい、咲希。お前”うん”と”そうだね”以外で何喋った?」
「うん?」
「そうそう、それだよ。お前、中身がすっかり空っぽになってやがるな」
目が覚めると私はまっしろになっていた。私の中身は、言葉は、失われてしまった。
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