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知ってる。その話を聞くために電話をしたんでしょ?
「聞いたの?」
「うん。さっきラインしてたんだ。教えてくれてさ」
「仲がいいんだね。もしかして、彼女のこと好きだったりする?」
彼は黙った。
私は黙ることを許せない。だから、口を開いた。
「正直に言ってよ。本当はどう思っているの」
聞きたいのは「一番は君だよ」の台詞だけだ。
「僕は」
「もったいぶらずに言ってよ」
「何もしてないよ。あの子とは」
「私は、気持ちの話をしてるの。セックスとかキスとかそんな話はしてないよ」
「うん……ごめん。僕はあの子のことが好きだよ」
「そっか」
「あの子も、きっと僕のこと嫌いじゃないんだと思う。でも、あの子は彼女がいる俺とは何もしたくないって」
「何で私と付き合ってるの」
もう、この際どうでもよかった。
「君とは長い付き合いだし、今更別れられないし、情もあるから。君のことが嫌いなわけでもないし。僕のこと、すごく好きなことが伝わってくるから」
「別れられなかったの」
「うん。別れるつもりもないよ。あの子と会うのが嫌なら、もう会わないようにするから」
ぜったいに、誓って言える。会わないで済むわけがない。だいいち、会社の部下ならば会わずにすむ方法
なんてないだろう。
「じゃあ、転職してくれるの?」
「どうして」
彼はあの子が自分の部下だと知らないと思い込んでいたのか。
「会社の部下なんでしょ」
絶句したような息遣いと沈黙。なんて憎らしいほどにわかりやすいの。
「そうだよ。知ってるんだね」
「転職してくれるの?」
「それは難しいよ。今の会社は給料も良いし、条件も良い」
「じゃあ、無理じゃない」
私が責めるたびに萎縮していく彼を目前にしなくて良かったと思った。そうしたら、これまでの思い出まで灰色に染まってしまいそうだったから。
さっきまでの独占欲は一体なんだったのだろう。そもそも、あの感情は恋だったのだろうか。それすら怪しい。
「ごめんね。今度何かプレゼントするから」
続けようとする言葉を無視して私はこういった。
「別れようか」
鼻をすする音が聞こえたような気がしたけど、無視して電話を切った。
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