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1. 弟がアイドルに!?
ヘアアイロンで髪の先をカールし、ビューラーでまつ毛をくるんとカールさせる。
鏡の前でにっこりと微笑んで、「おはようございます」と挨拶をする。
これが私の毎朝の儀式。
「うん。今日も『完璧な女の子』だね」
こうして完璧な女の子、速水琉羽としての一日をスタートさせる。
寮を出ると、十一月の澄んだ空気が私の気持ちを引き締めてくれる。
学校へは道を挟んですぐだ。
教室に入るとそこには女子ばかりの世界が広がっている。
星崎学園は中学、高校、大学と全て女子校だ。
私は中学から星崎学園に通っている。
家から通えない距離ではないけれど、私はとある理由から寮生活を選択していた。
「速水さんの髪の毛っていつもサラサラだよね。何したらこんなうるつやになれるの?」
朝から始まるのはいつもメイクか髪型の話ばかり。
女の子達は皆、自分磨きに余念がない。
『完璧な女の子』であるためには、彼女たちよりもさらに上を目指さなければいけない。
それは私にとっては、なかなかハードルが高いことだった。
「特別なことはしてないよ。トリートメントしっかり時間おいて、髪に浸透させるようにしてるくらいかな。日本未発売だけど、このヘアオイルお母さんからお土産にもらったんだ。使ってみる?」
私が愛用中のヘアオイルをカバンから出すとクラスメイトが、「さすが速水さん! 速水さんのご両親アメリカ在住だもんね。いいなあ」と褒めてくれる。
うれしい。時間をかけてケアしている髪の毛を褒めてもらえた。
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