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『アオイ』だ。
突然のご対面に驚いたのは向こうも同じだったようで、彼はビクッと肩を震わせて固まった。
「リュウ……?」
アオイが怪訝そうに琉心の名を呼ぶ。私の顔を見て琉心だと思ったらしい。
「なんで女装なんてしてんだよ。つーか何やってたんだよ、戻ってこないかと思って、焦ったんだからマジで」
言いながら私の肩に手を置いて、安堵したようにそこに額を乗せた。
女装なんかしてないですけどーっ! 私、女だからっ!!
相手の髪が頬に触れるか触れないかの近距離に、私は身体が動かないだけじゃなく、呼吸まで止まってしまった。
心臓だけがバクバクと勢いよく鳴り響いている。
「あれ……、なんかおまえちっちゃくない?」
私の身体に触れてようやく違和感を抱いたらしいアオイが、顔を上げる。
耳元で響く、透明感のある低い声。首の後ろがぞわっとした。
ちちち、近いっ。距離が近いから……っ!
視線だけで必死に逃げる。穴が空くほど見つめられているのがわかる。
身体を駆け巡っていた血液が、一気に顔に集まるのがわかった。
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