1. 弟がアイドルに!?

15/38
前へ
/228ページ
次へ
「おお、リュウのそっくりさん!」  私を見て楽しそうに声を上げるのは、目がくりっとした小柄な男の子だった。ふわふわっとし前髪をピンで留めて額を出している。『ユーリ』だ。 「俺、ユーリ! リュウとはAirってユニット組んでるの。ねえ、Airって知ってる?」  ユーリは物怖じしないタイプらしく、他の二人とは違っていきなり私に自己紹介をしてきた。 「おい、ユーリ」とアオイは止めたけれど、ユーリは手を差し出して握手まで求めてくる。  私はその手をじっと見つめた。手をとるべきか否か。 『完璧な女の子』としてはどんな対応が正しいのか。 「あれー? 聞こえてる? リュウの妹ちゃん?」  その言葉に私は弾かれたように我に返った。 「はじめまして。私、琉心の双子の姉の速水琉羽といいます。弟がお世話になってます」  丁寧に言ってぺこりと頭を下げた。  うん、これが正しい対応だ。初対面の男の子の手を取るなんて、『完璧な女の子』の道から外れている。  改めて三人を眺める。実物は動画よりもリアルにかっこいい。  琉心は友達までキラキラしてるんだなあ……。 「るーちゃんか。よろしくね! こっちがハルトでこっちがアオイだよ」  ユーリが他の二人を紹介してくれる。だけど私はAirの芸能界入りを阻止しにきたんだから、この人達から見たらきっと敵のはず。  そう思うと緊張して、挨拶をする笑顔もぎこちなくなってしまった。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

497人が本棚に入れています
本棚に追加