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「おお、リュウのそっくりさん!」
私を見て楽しそうに声を上げるのは、目がくりっとした小柄な男の子だった。ふわふわっとし前髪をピンで留めて額を出している。『ユーリ』だ。
「俺、ユーリ! リュウとはAirってユニット組んでるの。ねえ、Airって知ってる?」
ユーリは物怖じしないタイプらしく、他の二人とは違っていきなり私に自己紹介をしてきた。
「おい、ユーリ」とアオイは止めたけれど、ユーリは手を差し出して握手まで求めてくる。
私はその手をじっと見つめた。手をとるべきか否か。
『完璧な女の子』としてはどんな対応が正しいのか。
「あれー? 聞こえてる? リュウの妹ちゃん?」
その言葉に私は弾かれたように我に返った。
「はじめまして。私、琉心の双子の姉の速水琉羽といいます。弟がお世話になってます」
丁寧に言ってぺこりと頭を下げた。
うん、これが正しい対応だ。初対面の男の子の手を取るなんて、『完璧な女の子』の道から外れている。
改めて三人を眺める。実物は動画よりもリアルにかっこいい。
琉心は友達までキラキラしてるんだなあ……。
「るーちゃんか。よろしくね! こっちがハルトでこっちがアオイだよ」
ユーリが他の二人を紹介してくれる。だけど私はAirの芸能界入りを阻止しにきたんだから、この人達から見たらきっと敵のはず。
そう思うと緊張して、挨拶をする笑顔もぎこちなくなってしまった。
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