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皆が出て行くと途端に静寂に包まれたリビングが広く感じる。こんな広すぎる空間に、琉心はひとりで何を想って過ごしていたのだろう。
一瞬、そんな感傷に浸りかけたけれど、よく考えたらAirの皆は昨日からこの家にいたっていうし、おそらく日常的に集まったり、泊まったりしているんだろう。琉心のことだから、寂しく過ごしてたことなんてなかったに違いない。
「Airかあ……」
確かに間宮さんの言っていた通り、かっこいい男の子達だと思う。ダンスの実力はどうか知らないけれど、顔がかっこいいってだけじゃなく雰囲気も人を惹きつけるオーラを持った人達だ。一緒の空間にいるだけで、ドキドキしてしまうような。
もし間宮さんの言うように、Airが既に女子高生に人気のグループだったとしたら、ハルトに彼氏のフリをしてもらえるとしても、堂々と彼氏ですだなんて、紹介できない。
それはそれで間宮さんが卒倒してしまうし、表立って嘘を吐くのは気が引ける。そしてAirに迷惑がかかってしまう。
だからほんのちょっと。ほんのちょっとだけ。
速水さん彼氏いるんでしょ? って言ってくれてるあの子達の好奇心を満たせる程度でいい。
チラッと背中を見せる程度の存在感でいい。有名人じゃなくて全然いい。それぐらいのお願いなら、ハルトも叶えてくれるんじゃない?
思わぬところで私の願いが叶ってしまいそうなチャンスに、私の頭の中はすっかり支配されてしまっていた。
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