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「リュウが可愛いかどうかはわかんねえけど」
「……」
「意外に似てない」
「……え」
「よく見たら。あんたと琉心」
「……」
それはどういう意味なのかよくわからない。だから私は何ともいえない表情をしていたと思う。
「違う人間だから、当たり前か」
驚いて目をパチパチさせてしまった。よく考えたら当たり前のことを言われただけなのに。
だって小さい頃は誰もそれを言ってくれる人はいなかった。だから私はその瞬間、胸のどこかにつかえていた何かが、スッと取れた気がしてしまった。
アオイみたいに素直にものごとを考えられたら、どんなにかいいだろう。
「う、うん」
「あんま不用意に顔晒さない方がいい」
「……うん」
「俺のキャップ持ってきたから。明日これ被って」
そう言ってアオイは紙袋からキャップを出すと、ウイッグを被っている私の頭の上にそれを被せた。さっきから距離が近くて妙にドキドキしてしまう。アオイはこんなにも事務的に明日の準備をしているだけだというのに。
こうなると自意識過剰みたいで恥ずかしくなってきて、意識していることを絶対に悟られたくないと思ってしまう。
だからアオイの貸してくれたキャップを好都合だと、ギュッと両手で自分の頭に深く被った。
「……ちゃんと返せよ」
「……なっ、か、返すよっ」
アオイはそれがキャップを気に入ったせいだと思ったらしく、見当違いなことを言ってくる。
私は思わず顔を上げて反論してしまった。そのせいでまた、アオイと目が合ってしまった。
思った以上に距離が近かった。
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