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琉心の芸能界入り阻止作戦その一。私は手堅い手段を取った。
ニューヨークにいるお母さんに電話した。
「もしもし、お母さん!? 琉ちゃんが動画投稿してるって、知ってる!?」
『えっ? 動画って?』
「ダンスの動画だよ! 琉心ダンスなんてやってたの!?」
『中学のときにスクールに通ってたけど……、なあに? 急にどうしたの?』
私の剣幕に対し、お母さんはのんびりした口調だ。
動画投稿にあまり反応がなくて、私は焦った。
「このまま琉ちゃんが芸能界にでも入っちゃったら、どうするの!?」
『やだぁ、琉羽ちゃん。いくら琉ちゃんがかっこいいからって、芸能界なんてそう簡単には入れないわよぉ』
そう言ってきゃらきゃらと笑うお母さんに、私の不安はさらに増大した。
自分の息子をかっこいいって……!
――ダメだ、お母さんはダメだ。味方にならない。
下手をしたら琉心の芸能界デビューに好意的な意見すら言いかねない。
ここは厳格なお父さんに……。
そう思ったけれど、お父さんには電話できなかった。
お父さんと話そうと考えただけで、お腹のあたりがずんと重くなる。
お父さんは厳しい人で、気軽に電話できるほど私たちはくだけた関係じゃなかった。
反対するお父さんを押し切って星崎学園の寮に飛び込んだから、なおさら。
成績をもっと上げて、私の『完璧な女の子』が完成するまでは、お父さんには自分から連絡しない。
それこそが、私が自分の中で決めた『完璧な女の子』のゴールだった。
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