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5.止められない気持ち
学校は思ったほど騒ぎにはなっていなかった。やっぱり動画を見ているのは一部の生徒だけのようで、この学校では間宮さん達の方が異分子なんだろう。
もちろん私とAirの繋がりを疑うような噂も一切ない。それは私にとっては心底ありがたかった。
「今日の英語、出席番号順だから私当たりそうなんだよね~。速水さん予習してない?」
休み時間、私の周りには自然に四人くらいの女の子が集ってくる。メンバーはそのときによってまちまちで、今は普段は別のグループにいる松井さんが隣にいる。
しばらく松井さんも一緒に女子力トークをしていたけれど、ふと思いついたように松井さんが尋ねてきた。たぶん確信犯的に。
「やってあるよ。合ってるかは自信ないけど。よかったら写す?」
「さすが速水さん! 頼りになるー」
本当は勉強全般に自信はない。けれど『完璧な女の子』は予習も宿題も怠ってはならない。お肌の手入れをするのと同じくらい、丁寧に予習ノートを仕上げなければならない。
「速水さんのノートすごく綺麗で見やすいね!」
「私もやってきたけど自信なくて……、答え合わせしてもいい?」
私が予習ノートを机の上に出すと、他の子もいそいそと自分のノートを取りに席に戻る。
写されて嫌な気持ちはしない。むしろこうやって褒めてもらえることが、私のモチベーションに繋がるからありがたいくらいだ。
こうやって真面目に勉強していれば、いつか満足のいく成績が取れるんじゃないだろうか。例えばアメリカにいるお父さんに胸を張って報告できるほどの。
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