4.逃げたい気持ち

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4.逃げたい気持ち

 そんなことを言われて、Airに会いに行かないなんて選択肢はなかった。   見つかってよかった、とホッとする気持ちと、琉心と対面するという緊張とで、自分の気持ちが喜んでいるのか、沈んでいるのかさえわからない。あえていうならば、溺れているに近い感覚だ。  Airの元には琉心が戻ってきて、自分という存在は彼らにとってもう何の価値もないものなんだなあという虚しい気持ちとか、でもそれが自分の望んだ平穏な生活なんだという気持ちとか、いろんな感情がぐわーっと高波のように押し寄せてきて、私は洗濯機の中に入れられたように、感情の渦でぐるぐると溺れていた。  気が付けばとっくに学校を後にしていて、私は制服のまま指定された喫茶店を目指して、ふらふらと歩いていた。ハルトが指定してきた待ち合わせ場所は学校からずいぶんと離れた場所にあって、私はバスに乗ってその場所まで向かわなければならなかった。  わりと老人が多い地域のカフェではなく喫茶店。もう学生の多い場所は懲りたらしい。  私も間宮さん達に見られたくないから助かるけど。
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