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「お母さん……、私イヤかも……」
父のいぬ間を見つけて、こっそりと母に打ち明ける。母が家にいる時間が多くなったのは嬉しいが、それでも恐怖や不快感が常に付きまとう生活はイヤだ。
母は私の頭を撫でる。私が落ち込んだとき、泣いたとき、母はそうやって笑って慰めてくれてきたが、今の母の顔は笑っているが困っているのがよく分かった。
「穂花は年頃だから気になるだけだよ。あの人も娘ができて舞い上がってるだけだから。ね?」
私が求めた言葉ではなかったが、母が困らせたい訳じゃない。それでも私はつい口が開いた。
「二人だけのときが良かった……」
「全く」
お母さんは私を優しく抱き寄せる。
「何があってもお母さんは穂花の味方だからね」
それから父がいるときは、母はなるべく私の側にいる。それでもなめ回すように私の体を眺める父は好きになれない。どうしようもないままに時は過ぎる。
その日は、父が夕飯を作ると言い出し、いやいやながらも私も了承した。それが夫婦喧嘩の始まりだった。
「ちょっと!穂花は牛肉駄目だって言ったでしょ!!」
母の金切り声が高く響いた。
「アレルギーなんて、ただの好き嫌いだろ!食えば治るさ!」
バシッと母の平手が父の頬を打った。
「ふざけないで!」
言い合いの続く中、私は椅子に座り小さくなっていた。結局、父がくだらねぇ!と言い捨てて、外に出ていった。
ガクガクと震える私を母は抱き締める。
「怖かったね……。穂花の言うとおりかもね。あの人じゃ穂花を殺しかねない……。別れるから」
「お母さん……」
私の顔はくしゃりと砕けて、母に抱きついて泣いた。ただ事件はそれだけでは終わらなかった。
その晩、私は自室で深い眠りについていたが、その中、口の中に何かしらの液体が流れ込んできた。
私の体は、ガクガクと震え、皮膚に蕁麻疹が浮かび上がる感覚が分かる。
口の中に入ってきたのは牛乳だと分かった。薄めを開けると父が私のパジャマのボタンを外していた。
アレルギーの症状と怖さで、私は声をあげられなかった。
父は、私の胸に手を当てて揉み出す。
「どうせ離婚なんだ。最後に楽しませてくれよ」
暗闇の中、父はそう呟いた。
父の手は私の下腹部に残る。
「うぁぁぁ!うわぁぁぁ!!」
怖さとアレルギーの症状で上手く話せないが、とにかく叫んだ。
父は私に平手打ちをして、首を締める。
「うるせぇよ」
そして意識は途切れた。
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