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白濁とした白
「この人がお父さんになってもいい?」
母の恋人と三回目に会った私の十一歳の誕生日に母は私にそう告げた。正直、私は母の恋人の男の人は苦手だ。私に話しかけるときに半音高くなる声もまじまじと私の表情を伺いながらにやつく顔も。だが、母がその人がいいと言うなら私は反対しない。母が幸せになってくれるならそれでいい。
「いいよ。お母さん、幸せになってね」
冬のファミレスで母は私を抱き締めた。母の春はもうそこだ。春には三人での生活が始まる。そのために母は一生懸命に恋人に私のことを教える。それは私の命にも関わることだから、母は口酸っぱく教え込むのだ。
「穂花は牛乳アレルギーだから、乳製品と牛肉は食べさせないで。うちの食事は私が作るからいいけど、外食のときには特に気をつけて」
乳アレルギー。私はその体質のせいで食べられないものが多い。幼いときに口にした牛乳のせいで呼吸困難になったことがある。牛乳にアレルギーがある人は牛肉が駄目な人も多いようで、母は私に牛肉を食べさせないようにも気を遣っている。
「へぇ。口にしたらどうなるの?」
父となるべき人は、私のうちの居間で寛ぎながら私をじろじろと見る。
正直、気分は悪いが私は母の横で紅茶をすすりながら大人しくしていた。
「命に関わるから、危険だということが分かればいいのよ」
母はぴしゃりと言ったが、父となるべき人はやはりにやつきながら私を見る。
何なのだろう?
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