第4章 口付けの余波

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「もっとこう、何?」 肩を掴んだまま黙り込んだ陽里に、史花は若干の苛立ちを眉間に乗せ、腕を組んだ。 史花が普段からする仕草ではあるが、バスタオルを包まれただけの胸元は組んだ腕で強調され、胸の膨らみも谷間も一層惹き立てられる。 「まー、何だ、とりあえず」 陽里は振り切る様にうつむいて胸元から視線を外すが、張り付いた様に史花の肩から手の平を外せない。 床に落とした視線の先に、細く尖る爪先が見え、手の平で掴むとすっぽり包み込めそうな足首に弾力のありそうな丸出しの太ももに釘付けになってしまった。 距離が近いが故に気付いていなかったが、バスタオルはかなり短い。辛うじて隠しきれているくらいの面積だ。 「 ────── っ服!とにかく、服着よ」 頭の中でそのバスタオルを剥ぎ取る自分が掠めた瞬間、陽里は目を瞑り叫んでいた。  ヤりたいわけじゃねーし、ヤりたいけど。  違う違う違う違うっ!  とにかく今じゃない! 肩から手を退けて洗面所を出ればいいだけの話だ。なのに、肩から手を離せない。 苦悶する陽里の頬にひんやりと冷たい指先が触れた。そして目を開けた時には、唇に柔らかな感触が押し付けられていた。 息がかかるほどの目の前には、伏せた長いまつ毛。 湿った吐息を僅かに唇に感じ、陽里の中で(たが)が外れた。 薄く開いた史花の唇の間へ舌を分け入らせ、口付けを深める。史花の口の中は想像していたよりも冷たく、応える様に絡めてくる舌先は積極的だ。 あの日緋く染まる唇を見てから、ずっとこうしたかったのだと気付かされる。 なぜだろうか。 触れているとカサカサに渇き切った体の奥がじんわりと潤されているようだ。  もっと深く、もっと長く、このままで………
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