第4章 口付けの余波

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服を着て脱衣所を出ると、陽里がちょうど耳から携帯を離すところだった。 どこに連絡していたのか、すぐに思い当たる。 まだ先程の返事もしていないのに、手回ししていたところを見るに、提案を押し切るつもりなのだろうか。 「貴方の家って、父親と二人暮らしよね?学籍簿にも連絡先登録先にもそうあったけど」 「へー、オレの事それなりに知ってるんだ」 なぜか嬉しそうに陽里は笑う。 史花はあえて陽里から離れた位置にあるベッドに腰かけた。 「教務課にいる特権使ったの。あんな場面見られたんだもの」 「職権濫用ってやつだ」 当たり前の様に史花の隣に腰掛け、陽里は含みのある笑みを浮かべる。 「親父は家には寝に帰るようなもんだから、いちおその分夜のセキュリティーは万全」 「セキュリティー?職業欄、公務員だったけど、お偉方とか?」 「そこはまー、そんな感じで」 噂では皇子(おうじ)様は女の家を泊まり渡っていると聞いていた。父親との関係が良好ではないのかも知れないと勝手に邪推していた。 女を連れ込める様な関係性となると、全く検討がつかない。 「貴方の家には行けない」 陽里の笑顔を振り切る様に史花は立ち上がる。 正直、ホテルに泊まり続ける訳にはいかないが、いつまで今の状態でいれば良いのか判断もつかない。 (ひじり)の出方がまるで見えないからだ。 (ひじり)が事の一連を長老に報告していたとしたら、一族が動いてしまう。 皇 陽里一人守り切れるかも分からない現状で、その家族までも巻き込んでしまうと収拾のつけようがない。
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