戦場秘話 アルト・ルッティネンの回想

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 気がつくと、私は全身が包帯に巻かれた姿で、病室の寝台に横たわっていた。  右足の膝から下が無くなっていた。左目も見えない。  軍医が言うには、私は一ヶ月間昏睡状態だったらしい。  ボロボロの状態で基地に帰ってきた魔竜は、着陸直後に絶命した。座席の私も死んでいるものと思われたが、真っ先に駆け寄ったエルモが微かに息をしていることに気付き、基地の仲間たちは大急ぎで野戦病院へ私を運び込んだとのことだった。  目覚めた次の日の正午、停戦協定が発効した。  エルモが真紅のマフラーを巻いて停戦後に無断で出撃したのを私が知ったのは、戦後一年が経ってからだった。  エルモは帰ってこなかった。真紅のマフラーも、今度こそ帰ってこなかった。
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