第1章 新たなる危機

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第1章 新たなる危機

 西の辺境に位置しながらも栄華を誇るカタコリーナ王国……。  三人の勇者の活躍と魔王の秘薬により、君主ロキソ王の愛娘コリトル姫の()も癒え、 一度は衰退した王国も再びの活気と繁栄を取り戻しつつあった。  ところが、安心したのも束の間、この平和な王国は大いなる闇に再び覆いつくされようとしていた。  それも、またしてもコリトル姫がらみで……。  魔王の秘薬の効能で本来の美貌と自信を取り戻し、以前のように人前へも積極的に出て行くようになった姫であるが、何事も度を超すとむしろ困ったことになる。  そうして大勢の人々から羨望の眼差しで見つめられ、他者承認欲求を満たすことに無類の快感を覚えるようになった彼女は、すっかりその虜になってしまったのである。  特に昨今、王国の若者に人気のSNS(※「即興で なんか描いて 宣伝」の略)を使うことが彼女のお気に入りだ。  例えば、王宮で豪華な食事を食べている自分を宮廷画家に描かせ、「どうしよう。毎日こんなの食べてたら、また太っちゃう~!」とうキャプションを付けたものや、王女付きの有名メイクアップアーテイストにバッチリメイクしてもらっているのにも関わらず、「すっごいブスだけど、すっぴんさらしちゃった」と書き込んだ似顔絵を国中の掲示板に張り出し、人も羨むようなキラキラした己の暮らしぶりを毎日のように下々の者へ見せびらかすのだ。  つまり、コリトル姫は〝キラキラ女子〟になってしまったのである!  この性悪極まりない行いに、あんなに皆から愛されていた姫の人気も美人に甘い愚かな野郎どもを除いては急落。殊にこの「一番嫌いな女」的SNSに国中の女子達は大炎上し、国民の心はすっかり王室と王国から離れてしまった。  そして、そんな王と国のために危険な海へ船を出し、異国と貿易を行おうなどという勇者(・・)的な船乗り達も姿を消し、再び王国の経済も冷え切ってしまったのでる。  だが、それはまだこの国に差し迫った危機の序章に過ぎない……本当の災いは、海を隔てた()の地において、人知れずその萌芽の時を迎えていたのだった――。
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