第4章 進撃の鬼騎士

2/2
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「かくなる上はやむをえん……我は近衛師団長フェルビ! 鬼騎士殿に一騎打ちを所望する!」  ただ一人、やはりフェルビだけが勇敢に母国を救うべく強敵へと立ち向かった。 「ほう。骨のあるやつが一人はいたか。おもしろい。相手になってやる」  そんな彼女の勇気に喜びの声をあげると、ナーマ・ハーゲーはブオン…と奇妙な音を立てて、魔法で造られた赤く輝く光の刀身を持つ〝ライト出刃包丁〟をその手にした。 「我が命、薔薇の花弁のように散ろうとも、この国はわたしが必ず守る……参る!」  対してフェルビも細身の剣をすらり…と抜き、その碧い瞳に強い意志を秘めて鉄仮面の鬼騎士へと斬りかかる。  火花を散らしながら激しく交錯する剣と剣……剣技はほぼ互角。その攻防は一進一退を極め、勝負はいつまでもつかぬかに思われた。  しかし、ギィィィーン! と一際大きな金属音が響いたかと思うと、フェルビの剣は上空高く弾き飛ばされてクルクルと宙を舞い、彼女の美しい肢体も冷たい石畳の上へと倒れ込む。 「くっ……殺せ。わたしの負けだ……」  すかさずライト出刃包丁の赤い切先を突きつけるナーマ・ハーゲーに、フェルビは瞳を閉じて潔く負けを認める。 「貴殿の騎士道、しかと見せてもらった。そなたには勇者となる資質がある。殺すには惜しい逸材だ」  しかし、意外にも彼はとどめを刺さず、その(やいば)を引き戻すと、敗北したフェルビに称賛の言葉を投げかける。  互いに剣と剣で語り合ったことで、二人の間には一種友情のようなものが芽生えていたのだ。 「だが、堕落したこの国の処遇はまた別だ。このような有様になったのもすべては王の責任。ロキソ王には退位してもらい、以後、この国は私が恐怖の大王として支配する」 「フッ……行け。負けたわたしにもう、その覇道を止める権利はない……」  それでもナーマ・ハーゲーは本来の目的を忘れることなく、どこかさっぱりとした顔で倒れ伏すフェルビをその場に残し、学徒ルーパーを引き連れて王都への行軍を再開する。  その道に、彼らを阻む者は最早、誰もいない……あれよあれよという間に城へとたどり着いた魔王軍は、易々と城の中にまで侵入を果した。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!