第3章 勇者の招集

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 …………しかし。 「ーー鬼騎士をなんとかしろ? ああ、無理無理。見てわかんないですか? 今〆切に終われててそれどころじゃないんですよ」 資料の本や紙の束でいっぱいの部屋の中、自分でも絵を描くとともに忙しなくアシスタントに指示を飛ばしながら、その合間に王の使者として来たバンテにカブラは答える。  コリトル姫を病から救った三勇者の一人カブラは、その名声と王室のコネを使って見事、夢だった新人賞に自らの冒険漫画を捻じ込み、それを踏み台に週刊漫画誌『少年カンペ』の連載を勝ち取っていた。  だが、週刊誌で連載を持つということには想像を絶する大変さがあり、週一でやって来る〆切に日々追われ、寝る間も惜しんでカブラペンを執る彼に鬼騎士の相手をする余裕など一秒たりともないのだ。 「ああ、編集さん! すいません。もうほんの少しだけ待ってください! 今日の夕方には最後のページあげますので!」  原稿の催促に来た借金の取り立て屋の如き担当編集者に、長い緑の髪を振り乱してペコペコ頭を下げるカブラを見て、これはまず説得は不可能だろうとバンテは次なる勇者のもとへ向かった。
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