第5章 勇者の覚醒

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「私が……勇者?」  自らが勇者と呼ばれ、驚きと困惑の表情をその童顔に浮かべる彼であるが、さらにさらに、またもや新たな闖入者がこの場の渾沌ぶりを盛り上げる。 「サロン! あなたの真の目的は姫を改心させることだったのですね。ツッパリ面などと批判したことは謝ります。ツッパリがじつは親孝行で友達思いだったりするのと同じく、あなたは悪ぶった態度の裏に優しき心を隠したまさに勇者……私は決めました。私の跡を継ぐ、魔王の後継者にあなたを指名いたしましょう」  心配して、はるばるブラックサンダー島から追って来た魔王までが、ちょうどこの場に出くわすとまた勘違いから彼を褒めたたえたのである。 「ええっ! 私が魔王様の跡取り……つまり、魔王太子に!? なんと畏れ多い……」 「まあ! 本当の名はサロンさまとおっしゃるのね! それに魔王さまの王太子になられるとは……これでお互いに王族。身分的にも問題ありませんわ! もう、神さまが結婚しろと言っているのに違いありません。式の日取りはいつになさいます? 教会はどちらの地元がよいかしら? それとも南国リゾートでの挙式にします?」  降って湧いたような出世の話になおいっそう困惑する彼の傍らで、すっかりキラキラ女子から恋する乙女へと変貌したコリトル姫が、勝手に暴走して早まったことをくっちゃべっている。  彼の侵攻の目的とは大きくかけ離れたこの結末……まさに混沌の極致である! 「もう、なにがなんだかさっぱりわからないけど……でもまあ、絶滅したと思っていた〝勇者〟もこの通りにまだ生き残っていたし、私の目的もだいたいは達成できたってことで良しとするか……なんか、私も勇者になれたし、それに魔王太子だなんて、デヘヘヘ……」  しかし、どんな形にせよ〝勇者〟の復活という根本的な問題は解決したこともあり、また、憧れの勇者や魔王の後継者になったことで気を良くしたナーマー・ハーゲーことサロン・パースは、湧き上がる嬉しさにだらしなく顔を蕩けさせると、その理想ゆえの怒りの矛…否、怒りの出刃包丁を収めたのであった。  なんやかやあったけど、とりあえずは一件落着。カタコリーナ王国は今日も天下泰平である。  ちなみに後年、現魔王の跡を継ぎ、次代の魔王となったサロン・パースであるが、その年齢からすれば信じられない若さ…というか童顔さから、別の意味でも〝魔王〟と呼ばれ伝説となるのであるが……それはまた、別のお話……。 (勇者―Episode 2― 最後の勇者 了)
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