第3章 勇者の招集

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第3章 勇者の招集

「ーーというわけで大変ナリよ! 今度攻めて来るやつは見た目だけ怖い魔王様とはわけが違うナリよ! 一言で言えば、〝本気〟と書いて〝マジ〟ナリよ!」  豪華な装飾の施された王宮の食堂、それに見合う豪勢な昼食を前にポカンと大口を開けて固まるロキソ王に対し、顔中、長い髪と髭に覆われた船乗りの男が慌てた様子で危急を知らせる。  このムク犬のような毛むくじゃら、以前、操舵の難しい〝じゃじゃ馬海〟を渡って勇者三人をブラックサンダー島へと送り届けた凄腕航海士である。  その功績からその際に使ったキャラベル船を王より下賜され、現在は王国と島とを結ぶ連絡船を運航して自ら船長を務めている。  そんな仕事柄、カタコリーナ王国を心配する魔王に遣いを頼まれ、ムク犬船長はサロンの侵攻計画を急いで知らせに来たのであった。 「なんということだ……この王国の一大事、解決できるのはやはりあの三人の勇者しかいない! あの三人は今どこにいる!? 」  この王国史上最大の危機に、王の脳裏には愛娘と王国を救ってくれたあの三人の顔が自然と浮かび、振り返ると王室付き執事のバンテに大声を張り上げて尋ねた。 「確か、三人とも今はそれぞれの道に進んでいるかと。有名な彼らのこと、すぐに居場所は知れると思います」  訊かれた執事は、冷静な声の調子の中にも焦りを覚えている様子でそう答える。 「ならばすぐに呼び寄せるのじゃ! それからフェルビにも知らせて近衛師団に迎撃体制をとらせよ! 敵の侵攻は近い。急ぐのじゃ!」 「ハッ! 早速に!」  答えを聞くやロキソ王は矢継ぎ早に指示を出し、バンテは一礼すると早足に食堂を後にしてゆく。 「あのお三方がいてくれれば心配いりませんわね! でも念のため、わたくしもSNS(※改めて。「即興で なんか描いて 宣伝」の略です)で王国のために命をかけてくださる勇者を募集しておきますわ。わたくしが呼びかければ、きっとすぐにフォロワーさん達が集まってくれるに違いありませんわよ」  また、王と同じテーブルで昼食をともにしていたコリトル姫も、自身の知名度を使ってそんな協力を申し出る。 「おお! それはますます頼もしい。敵は強大でまだまだ油断ならないが、なんだかなんとかなるような気がしてきたぞ!」  自信に満ちた姫の言葉に蒼白だったロキソ王の顔も徐々に血の気を取り戻し、胸を締めつけていたその不安も少なからず拭われたのであった。
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