第4章 進撃の鬼騎士

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第4章 進撃の鬼騎士

 サロン・パース改め鬼騎士ナーマ・ハーゲン率いる魔王軍は、じゃじゃ馬海の荒波をもものともしない、超巨大武装ガレオン船で王国の港へ姿を現した。黒船来航並のインパクトである。 「うちのキャラベル船なんか玩具みたいなものナリよ……」  そう呟くムク犬船長の言葉通り、その巨大な船影を前にして、すでに偽勇者ヨツベエとツイタをはじめ、近衛師団の兵達もビビって腰が退けてしまっていた。  それに加え、無抵抗のまま上陸を許した魔王軍の姿は、さらに彼らの恐怖心をやすやすと助長する。  長ランに鉄仮面をつけたナーマ・ハーゲーはもちろん、全員、白いブレザー・白いスラックスの制服で揃え、まるで〝オペラ座の怪人〟のようなマスクを着けた精鋭部隊〝学徒ルーパー〟の不気味さと言ったら例えようもない。 「ひ、ひいい! お、お助けぇ~!」 「こら! 待たんか! 持ち場を離れるな!」  しばらく戦もなく、多くが実戦を知らぬ〝ゆとり世代〟だったこともあり、完全に心を恐怖で塗りつぶされた近衛師団の兵達は、フェルビの静止も聞かず次々に我先にと逃げ始める。 「あ、そういえば、ハトコの叔父さんの妹の旦那さんの友人が危篤だとか言ってたんだ! 俺、行かなきゃならないんでこれで……」 「俺もそう言われてみれば、持病のナンタラカンタラ病が悪化して、しばらく英雄的行為は医者に止められてたんだった。戦う気満々だったのに、ああ悔しいなあ~……」  また、ヨツベエとツイタの二人も、いかにもな言い訳を口にそそくさとその場から姿を消す始末だ。  まあ、安全な場所で英雄的行為とかなんとか嘯くだけで、本当に危険な秘境を独りで冒険するだとか、強敵と命をかけた死闘を繰り広げるだとか、真に勇気のいることはできないヘタレな偽物の勇者なのでそれも当然である。 「フン! どいつもこいつも腰抜けか。ここまで腐っていようとは思いもしなかったわ!」  その(てい)たらくぶりを見て、ナーマ・ハーゲーは鉄仮面の下で呆れたように鼻を鳴らす。
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