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「ねぇねぇ、その人、どんな人?
榊くんと同じ陸上部員だったりする?」
私はちょっと期待。
筋肉質なスポーツマンな子だったさー、好みにぴったりなわけで、楽しみが増えるってもんじゃない?
「ううん。吹奏楽部。私たちと同じだね。」
佐夜の言葉に内心がっかりする。
うちの学校の吹奏楽部の男子たちは、もう少し体鍛えろ!って言いたくなるような線の細さ。
ま、コンクールに行って見てても、他校の部員だって似たり寄ったり。
中には体格いい人もいるけど、逆に少し鍛えて体絞れ!って言いたくなる人ばかりだし。
顔立ちが中性的な子なんかで、モテるんだろうなーという見た目の子をまれに見つけたこともあるけど、正直パッとしない。
……少なくとも私にとっては。
ま、でも、そうそう思惑通りに行くわけないし、榊くんを拝めるだけでも良しとしないとね。
「その人、楽器は何?」
「サックスだよ。あ、私が出てた2月のソロコンクール、あれに出場してた子なの。」
へぇ……。
2月のソロコンは、それぞれの地区大会を勝ち抜いてきての支部大会。
そこで選ばれた人だけが全国大会に行けるという位置づけだった。
佐夜のクラリネットの腕前はすごくて、金賞をもらってた。
全国の出場権は逃してしまったけど、多分惜しかったんだと思う。
その大会に出場できてるってだけでも、そこそこ、サックス、うまいんだろうなぁ。
「ソロコンの結果は?」
「銀だったって聞いたかな。」
そっかぁ。佐夜レベルよりかは、ちょっと届かない位置なわけね。
ソロコンの後、どういう理由かはあまり詳しく聞いてないけれど、佐夜は一回クラリネットを手に取るのをやめてしまった。
高等部に進んだら、吹奏楽部もやめてしまった。
私も微妙に避けられていた時期があった。
そんな佐夜は今、再びクラリネットを手にし、吹奏楽部にも復帰している。
そのきっかけをくれたのは、榊くんだと聞いている。
クラリネットが好きだって気持ちを再確認させてくれたのが榊くんで、だからもう一度吹いてみる気になったんだと佐夜は言っていた。
恩人、なんだと。
「で、どうかな、志穂。
一緒にソウの街に行ってみない?」
佐夜が少し遠慮がちに聞いてくる。
私の反応を見て、乗り気じゃないのかと心配してるのかな。
「……いいよ。行ってみる。」
私がそう言うと、佐夜は嬉しそうに笑った。
……はぁ……かわいい。
私が男なら、好きになってる。
……佐夜はあぁ言っているけど、榊くんはどうなんだろう。
そんな興味も湧いて、私は榊くんを会うのが違う意味で楽しみに思えた。
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