わしづかみの11月~Shiho

7/29
前へ
/122ページ
次へ
             * 「俺ら、幼馴染で、家族ぐるみでずっと付き合いがあったからさ。 何というか、きょうだいみたいな感じなんだよね。」 場所を移動しようと、駅近くのファーストフード店に入った。 お昼も兼ねて、それぞれ食べ物と飲み物を買って、おしゃべりを始める。 「家族が持ってる空気感みたいな感じなのかな。 似てると思うなら。」 山野井くんの言葉に、榊くんも頷く。 「家族っていうのがしっくりくるな。確かに。」 「手がかかる弟みたいなもんだ、走は。」 「はぁ? 兄貴面すんな。同い年だろ? 兄貴は一人で十分なんだよ、俺は。」 そのやりとりを見ていた佐夜が、「ソウには惺さんっていうお兄さんがいるんだよ。」と教えてくれた。 「いいなー。私、きょうだいいないから。 本当のお兄さんがいるソウも、弟みたいな幼馴染がいる秀平くんも羨ましい。」 佐夜が男子2人に笑いかける。 「だーかーらー。俺、秀平の弟じゃないってば。 サヤ、わざと言ってるだろ?」 ちょっと拗ねた感じで言う榊くんの様子に、佐夜がクスクス笑い出す。 「ごめん、ごめん。 ソウって、ちょっとからかうと楽しくて。」 「あ、わかる、それ。」 山野井くんが佐夜に同意するもんだから、榊くんは、ますます拗ねた。 ……さっきあいさつした時も思ったけど、榊くんって、こんな幼い感じの人だったんだ。 私は全国大会での精悍な姿しか見ていなかったから、何かイメージ違ったな。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加