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アルフレッドはわざとらしく考えるふりをして、おもむろに椅子から立ち上がるとシェリダンの側に来る。シェリダンの頤に指をかけて、ふっくらとした艶やかな下唇を親指の腹でなぞった。
「では毎日一回は、シェリダンから口づけてくれることにしようか」
ピクンとシェリダンの肩が跳ねる。カァーッと顔が茹ったように熱くなり、視線を彷徨わせた。
アルフレッドと口づけをするのはよくあることで、特に情事の時などは何度も何度も口づけをしている、が、よくよく考えるとシェリダンから口づけたことは数えられるほどしかない。アルフレッドとしては口づけを拒まれているわけではないので大した問題ではないのだが、自分から口づけるシェリダンの可愛らしい姿を見たいという欲望が勝った。
「…………」
キョロキョロとシェリダンは視線を彷徨わせる。頭の中でグルグルと考えるが、約束は約束で、負けは負け。
シェリダンは立ち上がってアルフレッドの首に腕を回し引き寄せて、ギュッと目を瞑ったままアルフレッドの唇に己のそれを重ねた。触れるだけのそれは、しかしシェリダンからすれば精一杯だ。アルフレッドはよくできましたと言うようにシェリダンの頭の後ろに手を当てて引き寄せ、ペロリとシェリダンの引き結ばれた唇を舐める。その促しにシェリダンがおずおずと唇をほころばせれば、スルリとアルフレッドの舌が入り込んできて口内を蹂躙した。
「んんっ……」
唇の合間から零れ落ちる艶やかな吐息にゾクリとアルフレッドの欲が刺激される。抱き寄せ、衣装の上から臀部をかき分け後孔をそろりとくすぐった。ビクビクとシェリダンの身体が震えて、ギュッとアルフレッドの衣服を掴む。その幼子のような仕草にアルフレッドは口づけを交わしながらクスリと笑んだ。本当にこの子は可愛らしい。
「シェリダン……」
シュルッとシェリダンの帯が外される。はらりとはだけた衣装に、シェリダンは慌てて襟を掻き合わせた。奪うような口づけからなんとか逃れて、弱弱しく片手でアルフレッドの胸を押す。
「アルっ、駄目です……まだ、湯浴みが――」
肌を合わせることが嫌なのではない。だが今日は夕食を終えてすぐにシェリダンの私室でチェスを始めたのでまだ湯浴みをしていなかった。昼間はまだ暑い季節であるから汗もかいている。せめて湯浴みをして汗を落としてからでないとアルフレッドに肌は晒せないというのがシェリダンの主張ではあるが、アルフレッドがその程度で引き下がるわけもなく。
「どうせ今から汗をかくんだ。終わってから湯浴みでも構わないだろう」
ちゃんと抱き上げて行ってやるから。フッと耳元で囁かれ吐息を吹きかけられては、シェリダンの身体から無意識に力が抜けてしまうのも仕方のないことだろう。
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