幸せのマフラー

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幸せのマフラー

 そのマフラーには見覚えがあった。  記憶を(さかのぼ)れば、祖母が巻いていたのを思い出す。  もう忘れてしまった祖母の温もり。  マフラーを鼻にあて、ゆっくりと息を吸った。だが、箪笥(たんす)のにおいしかしなかった。  電気代を節約するために、寝るときは暖房器具は使わない。そのため、布団を頭まで(かぶ)って丸くなって寝る習慣が私にはあった。  マフラーを見つけたその日、私は首に緩く巻いて眠りに就いた。
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