祖母

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祖母

「お母さん、誕生日プレゼント」  白髪混じりの髪は灰色に見えたのを記憶している。毛量は年齢のわりには少なくはなかったように思う。  普段は床ずれ防止に専用のクッションをお尻や背中に敷いていた。自力で寝返りはできなかったが、リクライニングを使えば一応座ることはできた。片側に支えを置かなければならなかったが、食事や会話をするときは少しでも衰えないように体を起こすようにしていた。  膝に布団をかけ、薄ピンクのパジャマの上にピンクの半纏(はんてん)を羽織っていた。そして、誕生日プレゼントのマフラーも例に違わずピンクだった。 「・・かわいいね」  マフラーを手にした祖母は、照れ笑いをしながらそれを広げた。 「私が()んだからあんまり温かくないかもしれないけど」 「友ちゃんが編んだの?  大変だったでしょう?  上手に編んでるね・・、ありがとう」  "友ちゃん"とは母のこと。私と話すときは"お母さん"と言うことが多いが、たまに祖母からは母に戻るのか、そうした呼び方をすることがあった。  祖母は母を誉めるような、そして、母からの気持ちを喜ぶような笑顔でそう言った。  祖母はそれを首にかけるが巻き方がわからない様子だった。首が絞まってしまうような巻き方をしていたため、母は 「お母さん、巻こうか?」 と尋ねた。すると祖母も 「うん、巻いて」 と恥ずかしそうに返した。  高齢ということもあったが、若干の認知症も出始めていたのかもしれない。自分の名前すら書けなくなったのに気づいたのは、そのおよそ一年前のこと。
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