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凪先輩に聞きたいこと。
それは、実技試験ってどんなことをして、それがいつからはじまるのかってことだった。
さっきの会話もテスト範囲だなんて言われたけれど、全然見当がつかない。
こうしてわたしが校内に残されている理由は、今日にでも実技試験が行われるってことだろうか。
電気式ポットのお湯が沸き、珈琲を淹れたカップを凪先輩の机の上に置く。
すると、ふっと視線をあげた凪先輩が小さく声をだした。
「きみの力は、いつ頃から自覚するようになった?」
「え?」
「当然覚えているだろう? 自分のことだ」
「もちろんです! ――物心がつく頃にはもうありまして、両親の話では、生まれて半年くらいから、異変に気がついたそうです」
「ほう? 馬鹿力の異変か。生後六ヶ月にしてベビーベットを持ちあげたりなどをしていたのか」
「違います! ――あ、いえ、まったく違うわけじゃないですけれど」
「なんだ、やっぱり持ちあげていたのか」
「わたしの言っている異変とは違いますって! わたしは全然覚えていないことですが――赤ちゃんとしてはあり得ないほど重かったというか」
「なんだ、巨大児だったのか」
「違います!」
わたしは、どう説明すれば伝わるのかと考える。
「その、わたしの大きさと体重は普通なんですよ。なのに、さっき銅像を持ちあげたときのような重さが、無意識に身体全体にかかっているときがあったというか。でも、身体に異常は全然ないので、いままで健康診断にも引っかかったこともないし、小学校へあがるころには地面にのめりこむようなこともなくなりましたし」
考えながら話していたわたしの言葉に、凪先輩は、ピンときたような表情をみせた。
「なるほど。重力操作系の能力かもしれんな」
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