第2章 新たな能力者

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 わたしの強張った顔に気づいた凪先輩は、面白そうに、ふっと表情を緩めた。 「まだ試験ははじまっちゃいない。だから、ぼくは付き添わないが、これから見回りと称して体育館へひとりで行ってこい。それくらい、きみひとりででもできるだろう?」 「馬鹿にしないでください!」  そう言い返すと、わたしはさっさと生徒会室の入口へと向かう。  わたしの背に、凪先輩が続けて声をかけてきた。 「体育館を見回ったら報告に帰ってこい。いまから何分かかるか時間をはかる。ただし三十分経っても戻ってこなければ、きみを笑いに行くからな。ほら、急げよ。でも廊下は走るな」  わたしは振り返りざま、思いっきり凪先輩を睨みつけてから部屋を飛びだした。  誰の姿もない静まり返った廊下を、私は早足でずんずんと進んでいく。  けれど、そのうちに不安になって、歩くスピードが落ちていった。  なんで急に、体育館の見回りなんてさせるんだろう。  それに見回りなんて、どうすればいいの?  窓や入口の鍵が閉まっているかどうかの確認でもすればいいのだろうか?  それに、体育館まで歩いていっても五分もかからない距離だ。  往復に見回り時間をいれてもだいたい二十分。  どうして三十分も余裕をもたせるんだろう?  首をひねりながらも体育館へ到達したわたしは、鍵が掛かっていなかった正面扉をゆっくりと横に押し開いた。
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