第2章 新たな能力者

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 放課後の体育館。  普段は全面を使って練習をしているであろうバスケ部やバレーボール部は、今日の活動を中止されている。  何の音もしない静かな体育館の入り口を、わたしはびくびくしながらのぞきこんだ。  けれど、なにも変わったところはない。  正面扉からおそるおそる入りこんだわたしは、土足厳禁のために、両脇に並んだ靴箱の前で運動靴を脱ぐ。  靴箱の横には二階の観覧席へとあがれる階段があったが、まずは一階と考えたわたしは、今度は中扉をゆっくりと引っ張り開けた。  緊張しながらのぞくと、誰の姿もない。  ほっとしたわたしは、ようやく中へと入っていった。 「――体育館の窓も全部閉まっていそうだし。見回りって、ぐるっと見渡して異常がなければ、もとのように扉を閉めて戻ればいいのかな」  口の中でつぶやくように言いながら歩を進めたわたしは自分の言葉通り、ぐるりと左右の壁や正面、天井などを見回す。  まったく異常がないことに安堵したわたしは、文句を口にする余裕まで出てきた。 「凪先輩が意味深なことを言って脅かすから、なにかあるのかと思っちゃったじゃないの。なにもない。はい、見回り終了っと」  ひとりうなずきながら、その場でくるりと回って入り口のほうへと振り向く。  そして。  扉の横の壁にもたれるようにしながら胸もとで腕を組み、ひっそりと佇んでいた背の高い男の人と目が合った。
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