第2章 新たな能力者

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 誰かがいるとは考えもしなかったわたしは驚き過ぎて、声も出せずに目を見開く。  そんなわたしの様子をみて、彼はふわりと小首をかしげた。  恐さは全然感じられなかったために、わたしは厚かましくも、じっと彼を観察するように見つめてしまう。  校内では見たことのない人だ。  長身で、指定の制服を着ていないし年齢的にも高校生には思えない。  この時期、教育実習生が来るという話は聞いていない。  ノンフレームの眼鏡の奥の瞳は澄んでおり、くせのない優しげな顔立ちは、とても不審者には見えなかった。  すっきりとした頬ににかかる色素の薄い長めの髪は細く、わずかな空気の動きでも反応するように、さらさらと揺れている。  ぼんやりと見つめていたわたしに向かって、困ったような表情になった彼のほうから口を開いた。 「――ねぇ。きみはここへ、なにをしに来たの?」
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