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彼は、わたしのほうへ手を差しのべてきた。
わたしも、おそるおそる右手をのばし、差しだされた手のひらをゆっくりとあわせる。
先ほどとは違って、その手は温かくて質感があった。
そっと引っ張り起こされ、わたしは立ちあがる。
ようやく笑いをおさめた凪先輩が、わたしと彼のほうへ近づきながら口を開いた。
「彼の名は透流だ。メンバーのひとりであり、近くの大学に通っている」
「――大学生?」
高校生じゃないメンバーがいるんだ。
わたしの考えを読んだのか、凪先輩が言葉を続けた。
「人間の記憶力や身体能力は、一部の学説では二十歳のころが最高期だと言われている。そのためにメンバーは高校入学の時期に見つけだし、成人するまでに訓練を受けるんだ。ただ、未成年者だけの組織では行動が制限されるために、必ず成人をひとりメンバーに加えてリーダーとする」
「ぼくは、リーダーとしては頼りないんだけれどね」
照れたように笑った透流さんの言葉を聞いた凪先輩は、苦笑を浮かべた。
否定をしない凪先輩。
それって、頼りないってところを肯定しているんじゃないの?
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