第2章 新たな能力者

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「ぼくたちも、そろそろ帰る支度をしようか」  透流さんの姿が見えなくなったあと、凪先輩が声をかけてきた。  陽が落ちる前に、それもそうだと考えたわたしは素直にうなずいて、校舎へと戻る凪先輩のあとへと続いて歩きだす。  しばらく生徒会室へ向かう廊下を歩いていた凪先輩は、前を向いたままで急に口を開いた。 「ぼくは上に立つ者として、適任者は三種いると考えている。カリスマ性を発揮して他人を惹きつける、本来のリーダー的存在の者。嫌われる対象者となり、他のメンバー同士の結束を固める役割をする者。この場合は、途中で反逆される可能性がある。そして、他のメンバーの間をうまく取り持てる人当たりの良い者」  わたしは、隣を歩く凪先輩の横顔を見上げた。 「きみは、ぼくの先ほどの態度を見て勘違いしたかもしれないが、透流さんを決して侮っているわけではない。適材適所という意味で、彼はぼくたちのまとめ役に適任だと考えている」  そこまで口にして、凪先輩はようやくわたしのほうへと顔を向けた。  その口もとは、微笑みという曲線を描いている。 「特にぼくの所属するグループのメンバーは、ひと癖ある連中ばかりだ。だからこそ、透流さんじゃなければ、まとめられないと思っている。――その点で、きみとは意見が合うようだ。さて、と。暗くなるから、ぼくがきみを家まで送り届けよう」  そう言い終わると。  呆気にとられて歩みが止まったわたしを置いて、すたすたと前へ進んでいった。  それは、ちょっとだけわたしを認めたってこと?  だけど、送ってくれるみたいな言い方をしていながら、振り返りもせずにこの場へわたしを置いていくなんて、矛盾もいいところだ。  やっぱり凪先輩は、マイペースなオレ様だよね。
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