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授業がないのにドアが開いている。
それって、わたしを呼びだした人が鍵を外したのだろうか。
とすると、入って待つべきなのだろうか。
もしかしたら、これから本当に実技試験がはじまるのかもしれない。
わたしは胸の前にカバンを抱えこむと、どきどきというよりもビクビクとしながら、足を踏みいれた。
教室へと入ったわたしは、自然と手をのばして入り口の壁にある電気のスイッチを探して押した。
明るくなったことで、わたしは無意識にためていた息をホッとつき、ドアを開け放したまま教室の真ん中へと向かって歩きだす。
けれど、――なぜだか妙な感覚に襲われ、ざわりと鳥肌がたった。
いまは朝の八時半ごろだ。
日が暮れているわけでもないのに、教室の四隅からじわりと闇が迫ってくる気がして、思わず両手で二の腕をさすりながら辺りを見回す。
そのわたしの目が、教室の一番後ろの壁にかかっていた時計へ向いたときに、ぎくりととまった。
慌てて視線を自分の腕時計に移して、心臓が凍りつくような恐怖が電流のように身体の芯を貫く。
――教室の時計も自分の腕時計も、両方の秒針がとまっている。
わたしは、動くものがなにもない教室の中を見渡した。
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