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通り過ぎたラジコンカーが、また向きを変え、わたしのほうを狙い定める。
けれど、さすがに椅子を登る機能はついていないようだ。
いつでも突っ込めるぞという威圧感をみなぎらせ、ラジコンカーは沈黙している。
そのあいだに、わたしは必死で、この状況から逃れる手を考えた。
なにかない?
なにかないの?
無意識に、どのくらいの時間がたったのだろうと、腕時計に目を走らせる。
けれど、時計の針は、相変わらず止まったままだ。
そのとき、わたしは腕に、もうひとつの腕時計型通信機をはめていることに気がついた。
そうだ、これがあったじゃない!
迷うことなく、透流さんから教えられた通りに横についたボタンを押しながら、わたしは通信機へ向かって叫んだ。
「助けて! 凪先輩ぃ!」
これで、凪先輩の持っている受信機に、わたしの叫び声が届いたはず。
きっと凪先輩は、表示されている場所を確認して、助けに来てくれるに違いない。
そう考えたわたしは、ちょっとパニックから立ち直ったと思った瞬間。
開け放していた教室の入り口から、白っぽい影がひとつ、ふわりと入りこんできた。
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