第3章 どうやら歓迎されていないようです

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 凪先輩じゃない。  いくらなんでも、こんなに早く来れるわけがない。  それに、その小ささと空中へ浮かぶ影に、お化けか人魂かと思ったわたしは、心臓がどきりと大きく跳ねる。  けれど、徐々に目が慣れてきて、空中に停止するように浮かんでいるものの輪郭がはっきりしてきた。  それがラジコンのヘリだとわかり、別の震えが全身に起こる。  椅子の上によじ登ったわたしに対してラジコンカーが使えないとわかったとたんに、空中から攻撃するものに変えてきたんだ。  それができるってことは、――これを使っている人は、どこからかわたしを見ているんだ!  気づいた瞬間に、ラジコンヘリがわたしに向かって突っ込んできた。  慌てて頭を抱えこみながら、体勢を低くする。  頭の上を通り過ぎる風を感じて、わたしは、おそるおそる目をあげてヘリを探した。  通り過ぎたヘリは、大きく旋回しながら、わたしのほうへと軌道を修正する。  どうしよう!  椅子から飛びおりて走って逃げたら、ヘリに追いつかれるのだろうか?  廊下へ飛びだしてドアを閉めたら、逃げ切れるだろうか?  わたしは実行するつもりで、椅子の上からそろりと片足を床へとおろす。  そのとたんに、ラジコンカーが動きに合わせてタイヤの向きを変えた。  ――? ラジコンを操っているのは、ひとりじゃないの?  ひとりで同時にラジコンカーもヘリも操れないよね?  ラジコンを使って、電気を消して、コンピューターの画面を全部つけて。  わたしひとりを恐がらせながら、きっと集団で攻撃してきているんだ!  そう考えると、なぜか不意に腹が立ってきた。  思いきり暴れてやる。  なにか反撃をするものは……?
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