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この状況をみて、わたしは呆気にとられたけれど。
はっと気がついたとたんに、わたしは凪先輩へ向かって怒鳴っていた。
「ちょっと、これ、どういうことですか? 凪先輩が仕組んだってことですかぁ?」
「馬鹿者。そんな面倒なことをするものか」
わたしの言葉をあっさり切り捨てたあと、凪先輩はぐるりと教室内を見まわす。
ふたたびわたしへ視線を向けると、つかつかと近づきながら呆れたように命令した。
「パソコンを元に戻して、椅子の上から降りろ。まったく。女の子として椅子の上にあがるなんて、恥ずかしくないのか?」
「仕方がないじゃないですか!」
わたしは頬をふくらませながら、デスクトップを元の場所へと戻す。
幸いコードは長かったようで、床上にとめているテープがはがれただけで断線はしていないようだ。
そして、そばに立った凪先輩へ、わたしはふくれっ面の顔を向ける。
すると、椅子の上から見下ろされるという構図が癇に障ったのだろうか。
「さっさと降りんか!」
低く叫ぶやいなや、凪先輩はわたしの乗っている回転椅子の背に手をかけると、全体重をかけるように一気に椅子を回した。
「きゃあ~!」
視界がぐるぐると回る。
振り落とされないように、わたしは椅子の背にしがみつく。
ようやく椅子の回転が止まり、床の上へおそるおそる降りたったわたしは、まっすぐに立てなかった。
ふらふらと床の上にへたりこむ。
凪先輩が大げさにため息をついたとき、教室のドアの陰から、ひとりの男子生徒が姿を見せた。
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