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両手を制服のポケットへ突っこんだ彼は、わたしより少し背が高いくらいの身長だろうか。
凪先輩と同じ漆黒だが、彼のような長めの癖のない髪とは違って短めで毛先が跳ねている。
瞳の奥に野性的な迫力ある光が宿り、他人を近づけさせない強靭な意思を感じた。
くらくら回る頭で見上げたわたしを、彼は、初めて言葉を交わしたころの凪先輩以上に、射抜くような冷たい視線で睨みつける。
そして、そっけない口調で言い放った。
「きゃあきゃあ騒ぐばかりで、まったく役に立たない。――俺は、女がメンバーに入ることを認めない」
「だが、それは、きみが決めることではないはずだ」
わたしが言い返す前に、凪先輩が鋭く切り捨てた。
ふたりの剣呑な雰囲気に、わたしは、ふと思い当たる。
もしかして、この彼はメンバーのひとりではなかろうか。
それなら、昨日の透流さんと同じように、わたしを試しがてら見にきたに違いない。
もしかしたら仲間になるかもしれない彼を、邪険に対応するのはまずいのではないかと考えたわたしは、どうにか笑顔を浮かべて声をかけた。
「戦隊メンバーの方だったんですね。良かったぁ。本当に怖かったんですよ。でも、女子がメンバーに入ることを認めないって言っても、カラーとして女性用のピンクの枠があるんでしょう?」
視点が定まらないままに、上目づかいで顔色をうかがいながら口にしたわたしへ向かって、さらに険のある表情を浮かべた彼は、突き放すように言った。
「なんだ。結局あんたも軽いノリで、メンバーの紅一点を期待して入りたいんだ」
「桂、きみは黙っていろ。話がややこしくなる」
すげなくダブルで返されて、うまく頭が働かないわたしはそれ以上言葉が思いつかずに、押し黙るしかない。
そんなわたしに一瞥をくれると、彼は踵を返して、さっさとコンピューター室から出て行った。
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