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「す、すみません!」
うつむいたままで謝り、その場から逃げるように走りだそうとしたわたしは、いきなり腕をつかまれた。
驚いて顔をあげると、それこそ探していた留城也先輩本人じゃないですか!
ラッキーと思う反面、心構えができていなかったわたしは、突き刺すような留城也先輩の視線を浴びて、緊張のあまりに凍りついた。
振り切ることもできずに引きずられるまま、わたしは四階へと続く階段の下まで連れて行かれる。
そこで、ようやく留城也先輩は、放り投げるようにわたしの腕を放した。
「どうせ凪先輩に俺のクラスを聞いてきたんだろう? なにを言ってきても、今朝のことは謝らねぇからな」
「違います!」
勘違いされたら困る。
わたしは謝って欲しいからきたんじゃない。
留城也先輩が口を開く前に、わたしは急いで言葉を続ける。
「わたしは浮かれて試験を受けようとしているわけでもないし、誤解されたままなのも嫌なので。それに、留城也先輩も、人を信じないだなんて凪先輩から聞いたんですが……」
「馬鹿か? アンタ」
言葉の途中でさえぎられた。
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