第3章 どうやら歓迎されていないようです

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『待ち合わせの彼は来ないよ。ここにいるのはきみひとりだけだ』  ヘリウムガスを吸って出したような高い声。  どこから聞こえてくるのか場所がつかめない。  心臓がドキリとして、正体不明の声に不安を感じた。  けれど、今朝のコンピューター室のような怪奇現象っぽさはない。  相手は誰だかわからないけれど、人間だとわかっているから。  もしかしたら、これから試験がはじまるのかもしれない。  そう思いついたわたしは、とり乱した姿を見せるなと凪先輩に釘を刺されたことを思いだし、悲鳴をあげないように我慢する。  そして、いかにも落ち着き払ってみせながら声の出所を探すように、本棚の上の空間をぐるりと見回したんだけれど。  そんな余裕を吹き飛ばすように、さらに声がかけられた。 『人間相手だからって安心するのは早いと思うよ。機械よりも人間のほうが怖いと思うなぁ。それと、これは試験じゃない。醜態をみせないように言われたみたいだけれど、女の子の怖がる姿は庇護欲を煽られて嫌いじゃないなぁ。こっちの場所がわからないんだ? それじゃあ不安だよね』  ――考えを読まれてる!
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