第3章 どうやら歓迎されていないようです

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 わたしはいま、そんなに思っていることが顔にでているのだろうか? 『表情から読んでいるんじゃないよ』  勢いよく後ろを振り向いた。  笑いをこらえているような声で、背後からささやかれている感じがしたけれど、そこには誰の姿もない。  気が動転して、なにも考えられなくなったわたしは、無意識に本の詰まった棚のひとつに背をくっつける。  見えない視線に背中をさらしたくなかった。  どうする?  どうすればいい?  とにかく、この図書室から逃げだすために入り口へ向かうべきだ。  そう考えたとたんに。 『逃げだすつもりなんだ? 入り口まで無事にたどり着けるかなぁ』  こちらの考えていることを次々と先回りするように言葉を出してくる。  本棚に背をあずけたまま、わたしは途方に暮れた。  動けない。
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