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学校側から言い渡されている試験であれば、凪先輩が必ず姿を見せると言っていた。
けれども、試験じゃなければ伝わっておらず、わたしがここにいることを凪先輩は知らない。
凪先輩の言う通りに、生徒会室へまっすぐ向かえば良かった!
『後悔したって遅いよ』
わたしへ向かって、声が容赦なく投げかけられる。
『こんな試験を受けようとするから、こんな目に遭うんだ』
やっぱり試験のことも知られているんだ。
この感じでは、わたし個人に対しての嫌がらせなのだろうか。
わたしが試験を受けられないようにするための妨害だろうか。
『メンバーに選ばれてどうする気なの? 他人のために自分を犠牲にすることはない。自分がしなくても、やりたい人間にやってもらえればいいじゃないか。きみは女の子なんだよ』
言葉はしだいに穏やかになり、諭すように緩やかな速さで語りかけてくる。
ガスで変えられた声は、聞きようによっては、まるで子どもの声のようだ。
なにか考えを持つと突っこまれるために目を閉じて、頭を真っ白にしようとするわたしの中へ、言葉はそろりと忍びこむ。
気づかないあいだに思考へ侵食してくる。
『わざわざ面倒なことを引き受けなくてもいいじゃないか。他人の心配なんかせずに、きみ自身の楽しい高校生活を大切にしたほうがいい。人生一度きりの高校生活だよ?』
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