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「凪先輩と留城也のことは下の名前で呼んでいるんだろう? それなら、オレのことも紘一って呼んでよ、桂ちゃん。うわぁ、いい響きだなぁ。紘一先輩だなんて」
「紘一、むやみに触るんじゃねぇよ」
少し離れたところで立ち止まり、留城也先輩は不機嫌そうに言い捨てる。
すると、わたしの手をつかんだまま、紘一先輩はわざとらしく留城也先輩の顔を下から覗きこむように見上げた。
「あれぇ? いいじゃないか。この子は留城也の彼女でもなんでもないんだろう?」
怒りのためか、さらに表情を険しくした留城也先輩と紘一先輩のあいだへ、凪先輩が割って入った。
「留城也、挑発に乗るな。紘一も勝手な行動をとるんじゃない。さっさと桂から離れろ」
凪先輩の言葉に、紘一先輩はあっさりとわたしの手を放して立ちあがった。
わたしは、自分が座りこんだままだったことを思いだし、慌てて両手を床について足に力を入れる。
無事に立ちあがれたわたしは、スカートの後ろをパタパタとはたいた。
そのあいだに、凪先輩が紘一先輩へ顔を向け、厳しい口調で続ける。
「無断で受験者と接触するんじゃない」
苦り切った表情の凪先輩が言うと、口もとに笑みを浮かべた紘一先輩がすぐさま切り返した。
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