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「行儀も悪い。動きも遅い。減点ね」
そう告げた宮城先生は、獲物を見つけたような眼をわたしに向けたまま、妖艶に笑った。
「いまから、メンバー選出試験を行います」
慌ててわたしは教室へ駆けこみ、一番前の席へと向かった。
その机の上にだけ、B4サイズの紙が一枚、伏せられていたからだ。
わたしが席に座ると同時に、これ見よがしに先生は、ちらりと自分のゴージャスな腕時計へ視線を走らせる。
「三分遅れでスタート。机の上のプリントを表に向けてはじめなさい。制限時間はなし」
その声に、わたしは急いでプリントをひっくり返した。
そこに書かれていた内容は、数学の問題。
それも、小さな文字でびっしりと書かれている。
実技試験って、筆記試験ってことだったの?
まったく解ける自信がないわたしは、顔面蒼白でプリントの問題を見つめる。
それでも、手も足も出ない状態で問題を凝視しているあいだに気がついた。
――違う。
いや、違うんじゃない、知らないんだ。
どの問題も、まったく知らない公式や記憶にない解き方をする問題ばかりだ!
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