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すると。
わたしの右手の中で、シャーペンが砕けた。
あまりの緊張に、力の加減ができなかったらしい。
握りつぶしてしまった。
慌ててわたしは、筆箱の中から新しいシャーペンをとりだそうとしたけれど。
手にしたとたんに、シャーペンの真ん中をひねりつぶしてしまった。
さすがに、教壇からわたしの様子を見ていた宮城先生が、驚いたように目を見開いた。
まずい。
このままじゃ、まともに試験さえ受けられない。
そのとき、事情を察したのか、背後から凪先輩の声が聞こえた。
「桂、焦るな。制限時間がないということは、逆に考えれば時間はたっぷりある。落ちついて考えろ」
凪先輩の言葉に、わたしは少し冷静さを取り戻す。
焦ったところで、事態が好転するわけじゃない。
この状態の中で、より良い方法と行動をとっていかなきゃ。
絶対絶命じゃない。
どこかに活路があるはずだ。
気を取り直したわたしは、今度は握りつぶすことなく、鉛筆を手に取った。
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