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翌朝、菜津美が渋い目元で朝食の準備をしていると、寝室から夫がバタバタと起き出してくるのが見えた。
「おはよう洋ちゃん」
「まずい!寝坊した!」
夫の洋平はそう言うと慌ててクリーニングから戻ってきたばかりのワイシャツの袋を破り、朝の日課のテレビも付けずに身支度を始める。
「今日、早く出社する日だったの? ご飯もう少しでできるけど……」
「ごめん、いいや! 今日は始業前に大事な会議があるからすぐに出ないと。帰りも遅いと思うから、晩飯も用意しなくていいから」
寝ぐせも直さずに家を出ようとしている夫について玄関に向かう菜津美。
普段身だしなみには気を使う洋平なだけに、よほど焦っているのだろう。
「行ってらっしゃい。気を付けてね」
「うん、ごめんな!」
パタンと閉じたドアを少しの間見つめた。
洋平が起きて家を出るまでほんの5分程度。嵐のような時間だった。
そんなことを思っていると、目玉焼きの入ったフライパンを火にかけっぱなしだったことを思い出し、慌ててキッチンに戻る。
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