。+The cracked heart +。

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あれから程なくして。 九条先輩は生徒会の仕事に行くとのことで、俺は自室へと戻ってきた。 九条先輩に、 『また誘ってもいいかな』 と。 控えめに、それでいて縋る様な。 そんな声音で言われ、俺は肯定の意味を込めて頷いた。 自室へと戻ると。 春が不貞腐れていて。 何故か蓮と那智までいる。 蓮は生徒会の仕事は、今日は無いらしく。 聞いたところ。 九条先輩と村岡先輩だけ仕事があるようだ。 そして、俺は春を宥めるべく。 俺の足の間に座り込んだ、春の頭を撫でているところで。 「凛、またお前は連絡も無しに…。心配しただろ」 「…ごめん、次は連絡するよ」 「それは昨日も聞いたんだけど?」 「…」 「で?何処に行ってたわけ?まさかまた新しい奴と付き合いだしたとか言わないよな?」 そう、問い詰めてくる蓮は少し怖い。 やはり。 蓮は、兄なんだなあと。 冷静にそんな事を考える。 蓮に聞かれた事を頭の中で反芻する。 九条先輩の部屋にいたと。 素直に話すべきなのか。 それとも。 適当な嘘を並べるべきか。 正直。 どちらにせよ、何かしらを言われる事に変わりはないだろう。 俺は、暫し思案した後。 素直に話そうと。 意を決した。 「…九条先輩の部屋にいた」 俺がそう告げれば、3人とも信じられないといった表情。 その反応に。 思わず苦笑いがこぼれる。 「え…っと。別に付き合ってるとかじゃないから。ただ、友達になっただけ。」 「凛。いつの間に九条先輩と仲良くなったわけ?」 「会長と凛とか、予想外過ぎるんだけど…」 「まあ、偶々だよ。偶々」 「付き合っては無いんだろ?」 「うん」 俺の言葉に、蓮と那智はイマイチ納得していないような表情を浮かべている。 先程まで、不貞腐れながらも俺の足の間に座り。 大人しく頭を撫でられていた春は、俺の方を見上げつつなんとも言えない表情を浮かべていた。 「りっちゃん、俺、心配したんだからね!」 「うん、ごめん」 「…まあ、相手が九条先輩なら仕方無いか。。」 「え?」 「んーん、なんでもない!独り言」 春がボソッと小さな声で呟いた、独り言は俺には生憎聞こえなかったが。 蓮と那智には聞こえていたのか。 二人は、同時に溜息を吐く。 「凛、鈍いにも程があるよ」 「ほんと。春が可哀想だろ」 「あーあー!れんれんもなっちゃんも余計なこと言わないでよ!りっちゃんは、このままのりっちゃんだからいいんだから!」 「春、お前も報われない奴だな。だから俺にしとけばいいのに」 「それはいい案だね。蓮ならきっと幸せにしてくれるんじゃない?」 「もー!そういう問題じゃないんだってば!」 3人は、俺の存在をさり気無く無視しつつ。 そんな会話を、繰り広げていたけれど。 俺には、何が何なんだか。 よく分からなかったが。 なんとなく。 先程の春の表情を思い出して。 今まで気づけなかった、 春の気持ちに、気づいてしまったような。 そんな気がした。
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