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それから、なんとなく出くわしてしまった流れで二人で屋上の端にある段差へ腰を下ろす。
彼に、『凛ちゃんは煙草苦手?』
と不意にきかれたので、静かに首を横に振り、制服のスラックスのポケットから愛煙しているメビウスを取り出す。
すると彼は、ニッコリとどこか嬉しそうに微笑む。
「なーんだ。凛ちゃんも吸うのか。これで、俺と凛ちゃんは共犯者だ」
「…共犯者……ですか」
そう言って彼は、子供のような無邪気な顔を覗かせた。
彼、基。
九条葵さんは、俺よりも1つ学年が上でこの学園の生徒会長だ。
双子の片割れである蓮が生徒会で会計を務めているので挨拶程度は交わしたことがあるものの、それ以下でもそれ以上でもない。
そんな彼と、こんな時間に屋上で煙草を燻らせる事になるとは。
全くの想定外もいい所というもの。
隣の九条先輩を横目で見やれば、俺が此処に来てから2本目の煙草に火をつけていた。
俺もつられるようにして、本日1本目の煙草に火をつける。
ゆっくりと吸い込んだ煙が、肺へと流れ込んでいく。
何かに飢えた身体が、煙草の煙でゆっくりと満たされるような感覚に陥る。
「凛ちゃんは、今日はおさぼり?」
「はい。本当は、教室に行こうと思ったんですけど。…空が綺麗だったので」
「そっか。俺も一緒。空が綺麗だったから」
そう言って、先輩は雲ひとつない青い空を見上げながら煙を吐く。
その横顔は、この間見た横顔と同じで。
なんとなく、得したような。
そんな優越感を覚えた。
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